NAO鍼灸院

顔・頭の症状

もくじ

①顔面神経麻痺
②めまいやふらつき
③耳鳴り
④突発性難聴・メニエール病(メニエール氏病)
⑤顎関節症
⑥眼精疲労
⑦脱毛症

①顔面神経麻痺

症状
 顔の一部が思うように動かなくなったり、顔が曲がった状態になると顔面神経麻痺が疑われます。片方の顔面に違和感を感じる、まぶたが閉じにくくなる、水を飲むと口から漏れてしまうといった症状で気付かれることもあります。顔面神経には、涙や唾液の分泌に関わる神経、味覚をつかさどる神経、大きな音から内耳を守るために鼓膜の動きを調節する神経などが含まれています。そのため、麻痺と同時に、涙や唾液が出にくい、味覚障害、音が響いて聞こえるなどの症状を伴うこともあります。はっきりした原因がなく顔面神経麻痺だけが生じる場合は、最初の報告者にちなんでベル麻痺とよばれますが、体内に潜んでいた単純ヘルペスの再活性が病因ではないかといわれています。顔面神経麻痺と同時に耳の周囲に水疱(帯状疱疹)が見られる場合はハント症候群とよばれ、めまい、難聴、耳なりなどを伴うこともあります。

原因
 顔面神経麻痺の明確な原因としては脳卒中や脳腫瘍などが挙げられます。それら以外の場合、つまり顔面神経麻痺を起こす原因が特定されない場合に「ベル麻痺」と診断されます。はっきりした原因が特定されていないベル麻痺ですが、顔面神経が炎症によって腫れてしまうことやヘルペスウイルスが原因の1つと考えられているので、病院の治療としては抗炎症薬(麻痺の症状が強い場合はステロイド系)や抗ウイルス薬などが処方されることが多いです。

病院へ行くのなら
 ベル麻痺は、不全麻痺であれば何も治療をしなくても予後は比較的良好とされます(これは時間が経過することにより、自然治癒力によって炎症が改善したり原因の一つと考えられているヘルペスウイルスに対する抵抗力を取り戻すからだと考えられています)。しかし残念ながら、ベル麻痺(特に完全麻痺)を発症してしまった全員が完全に回復するという訳ではなく、何らかの後遺症が残ってしまうケースもあります。
病院での治療は発症から3日以内の早期治療が有効とされるので、ベル麻痺(顔面神経の麻痺)が現れたら早急に神経内科もしくは耳鼻咽喉科を受診しましょう。それと並行して、ぜひとも鍼灸治療を受けていただきたく思います。

自分でできるケア・再発予防の方法
 残念ながら「ベル麻痺は再発しないとは言えない」症状です。そして、発症原因が明確に判明していないので、再発予防の方法もアバウトになってしまいます。精神的ストレス(不安・イライラなど)・肉体的ストレス(疲労・痛みなど)・環境ストレス(寒冷など)をできるだけ避け、心身や免疫機能への負担を軽減させることが大切です。これらの負担を全くのゼロにすることは困難なので、総合的にそれらを蓄積させないよう心掛けるべきでしょう。ベル麻痺の治療でご来院された患者さま方からは「疲れがたまっていた」「大きな精神的なストレスが続いていた」などの言葉を聞くことが多いので、常日頃からそれらに対してのケアをしておくことが第一になると思います。

鍼灸院での治療
 ベル麻痺は味覚の消失や顔面痙攣などの合併症もあり、後遺症が残ってしまう可能性がゼロではないことを考えると、できるだけ早期に完全に回復させることが望まれる疾患です。
鍼灸治療は自然治癒力を高めることができ、消炎(炎症を鎮める)や免疫機能向上の効果もあるので、ベル麻痺に対して有効な治療手段となります。もちろん、病院の薬の服用との併用でも何も問題はありません。共同運動の発症を防ぐために、強い刺激は加えずに治療いたします。

②めまいやふらつき

原因と症状
 めまい・ふらつきと一言で言っても、その症状の表現のされ方にはいくつかの種類があります。主に「ぐるぐる」や「ふわふわ」すると表現されるめまいは神経性のめまいと考えられ、その原因となる部位は大きく分けて、脳などの中枢神経と内耳にある三半規管の2種類があります。
神経性以外のめまいには、起立性低血圧などで起こる「立ちくらみ」や薬(降圧剤)の副作用で起こるものなどがあります。このめまいは高血圧や低血圧が関係しています。例えば、あまりに血圧が低くなると脳への血流量が減り、脳が酸欠状態になります。すると平衡中枢が不安定になり、フラフラ感が生じます。横になったり座ったりしている状態から立ち上がった時に感じる立ちくらみも、起立性低血圧で脳の血流量が一時的に少なくなり生じるものです(表1参照)。

病院に行くのなら
 以上のことから考えると、発症する症状によって専門が変わります。(立ちくらみではない)めまい・ふらつきが短期間で複数回続いた時には、まずは耳鼻科脳外科などで一通りの検査を受ける(脳に異常がないことを確認する)ことが安心につながると思います。
めまいは多くの場合、頭や身体の位置関係を認識する機能が障害されて生じますが、その原因にはさまざまな病気が関連します。耳の異常眼の異常、そして首の異常などを伴う疾患です。まずは、耳鼻科で病気の有無について確認しましょう。また、視力頸椎に異常がないことも、主治医に診てもらって下さい。
 また、脳幹や小脳などの中枢神経の変性(萎縮したり、神経細胞が死んだりすること)が原因で現れることがあり、その代表的な病気は「脊髄小脳変性症」で す。この病気は遺伝によって発病することもありますので、親や兄弟によく似た症状の方がいれば注意が必要です。
 いずれにしろ、慢性的にめまいが続くようなら、神経内科脳神経外科などを受診する必要があります。

鍼灸での治療
 病院に行って検査を受けたけれど、めまいやふらつきに関しては、異常は見つからない・薬を飲んでも症状が治まらないという方が多くいらっしゃいます。また、症状の程度や出かたも人それぞれです。実際MRIなどの検査で脳・耳ともに器質的な異常が見つからないけど、上記の中枢性めまいと末梢性めまいの症状が混在する患者さまもいらっしゃいます。そのような方々にこそ、鍼灸治療を受けていただきたいです。
西洋医学的に異常がない場合のめまい・ふらつきでも、鍼灸治療によって症状が改善する可能性はあります。耳周囲および頭部への血流を改善したり、首肩の筋肉の緊張を和らげることで心身をリラックスさせたりすることで、驚くほど症状が軽減することもあります。
表1

③耳鳴り

耳鳴りとは?
 一般的に耳鳴りはだれでも聞こえると言われています。音の全く無い部屋(無響室)では、ほとんどの方に耳鳴りが聞こえるという研究報告もあります。ほとんどの方は、生活の中では耳鳴りが余りにも小さいために周りの音に消されてしまいます。しかし、耳鼻咽喉科を受診される耳鳴りで長年苦しんでいる患者さまは少なくありません。耳鳴りの悪循環に陥ってしまうと大変つらい状況に陥り、経験のない方には理解しがたいものです。「耳鳴り」とは、周囲の音がないのに、耳の中で感じる音を言い、片耳、両耳、あるいは頭の中で聞こえる場合もあります。

耳鳴りの種類
 耳鳴りには「自覚的耳鳴り」と「他覚耳鳴り」があります。
自覚的耳鳴り 本人にしか分からない耳鳴りで、「ブーン」「ジー」「キーン」などの音があり、周囲が静かになる夜間に強くなることが多い。
他覚耳鳴り 他人にも聞こえる耳鳴りで、「ザーザー」「パカパカ」など血管の雑音が出ていることが多い。

 また、始まったばかりの耳鳴り(急性耳鳴り)と数ヶ月以上続いている耳鳴り(慢性耳鳴り)では、対応が全く異なります。鳴り始めたばかりの耳鳴りは、できるだけ早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。鳴り始めて数週間以内であれば、完全に音が消える可能性もあります。耳鳴りは、何らかの障害によって現れた症状ですから、早期に診断をつけ、原因疾患の治療を考える必要があります。数ヶ月以上続いている耳鳴りの場合、患者さまの悩みは、「この音何とかならないものか」と日常生活上、苦痛やストレスを感じていることが大半です。しかしながら、数ヶ月以上続いている耳鳴りは、その音を完全に消し去ることは困難なことが多く、上手くつきあっていく必要があります。たとえば海岸の波音や室内のエアコンのようなひっそり音を出している存在に変えることができればよいのです。

耳鳴りの原因と考えられる病気
外耳・中耳の病気 耳垢、外耳の異物(虫など)、中耳炎など。
内耳の病気 老人性難聴、騒音性難聴、突発性難聴、メニエール病など。
(耳鳴りのきっかけは内耳の障害が圧倒的に多いといわれます。)
中枢(脳)の病気 聴神経腫瘍、脳血管障害、脳腫瘍など。
全身の病気 高血圧、糖尿病、顎関節症など。
その他 ストレス、過労、不眠、二日酔いなど。

 近年、耳鳴りが大きな苦痛につながる「しくみ」がわかってきました。
部屋のかたわらで「かわいいお孫さんの弾くピアノの音」は、たとえ大きくてもあまり気になりません。音が大きくても読書でさえ出来てしまうものです。一方、嫌いな音楽やお隣から聞こえるピアノの音は、たとえ小さくても気になることがあります。さらに、日頃から気に入らない隣人であったり、「またか」という思いがあったりすると、怒りとストレスが生まれて、その音に気持ちはますます向いてしまいます。これは、耳鳴りに対する苦痛と本質的に同じで、脳が持つ高度な機能が関わっています。
 人を含めた高等動物には、いろいろな音に対して無意識で識別する力が備わっています。森の中で体を休めている時、風で揺れる草木の音は聞き流しますが、獣の近づく足音には敏感に反応します。進化の過程で備わった、自分にとって有害な音を意識にあげることが出来る防衛能力です。これは、大脳皮質下という所で無意識に音の識別が行われているとされています。この仕組みには感情も関わっており、獣の近づく足音に対して、恐怖感が強いとさらに敏感に反応します。また、獣の近づく足音に反応した脳は自律神経も調節します。自律神経は活動モードとなり、体を休息状態から緊急体制に切り替えるため、眠気は吹き飛びます。
 このように、自分にとって有害な音と認識されると、脳は意識の中に鮮明にその音を浮かび上がらせるとともに、自律神経をも調節するわけです。この機能が、まさに耳鳴りの苦しみをつくっているわけです。耳鳴りが続けば、誰もが不快です。 耳鳴りが不快と認識されると、頭の中にきわだって意識する現象が生じます。 これがストレスを招き、悪循環に陥っていきます。耳鳴りに対するストレスは、さらに耳鳴りに対する気持ちを強く自覚させていきます。 夜間この状況が起きると、自律神経は活動モードのままとなり不眠に陥ります。 不眠が続くと、寝不足になり、精神的なゆとりをなくします。気持ちのゆとりがなくなると、頭の中は耳鳴りのことばかりになってしまいます。このような悪循環が、耳鳴りが大きな苦痛となっていくのです。

「耳鳴り」は完治するのが難しい症状の一つです。しかし、さまざまな治療法を組み合わせながら効果を高めていくことは可能です。上記の「耳鳴りの悪循環」が少しでも改善していけば、以前あれほど苦痛だった耳鳴りが、あまり気にならなくなる日が来ると信じ、原因を突き止めて改善して行きましょう。

病院に行くのなら
 これらの症状の治療を目的に病院へ行くのならば耳鼻咽喉科になります。しかし、各種検査をしても「異常なし」と言われることが多いようです。それでも突発性難聴・感音性難聴・内リンパ水腫・メニエール病などの診断名が付けられます。主に、ビタミンB12・血流改善薬・利尿剤・炎症を抑えるステロイドなどが処方されます。

自分でできる改善法
 「耳の周りの血流を改善させること」が大切です。首・肩のストレッチ・耳周囲の筋肉のマッサージや指圧・軽い全身運動(有酸素運動)・身体(特に首周り)を温める、などが挙げられます。人によっては、精神的なストレスを減らす・気分転換をするなどが効果的だったりします。

鍼灸院での治療
 鍼灸療法は「人間の持つ自然治癒力を向上させる治療」ですので、器質的な問題が科学的に解明されていない、機能的な問題の症状に対しても効果を発揮することができます。耳鳴り・耳閉感・響き感を治療する場合、まずは耳周り・首・肩の筋肉の血流をよくすることが大切です。特に耳の周りの筋肉の緊張を緩めて血液循環をよくし、それにより内耳の栄養状態を良くします。患者さん自身に疲労やストレスで症状が悪化してしまう実感があれば、身体の疲れを取ることも重要となります。背中・腰・足など、疲労を感じてしまっている部分の筋肉を柔らかくすることで血流および栄養状態を良くして回復を促します。また自律神経の働きを整えることで、睡眠の質を向上させ、精神的なストレスの解消も助けます。
時により日によりで症状の強弱に変化があるならば、まず症状の軽い状態を維持することが大切です。症状の軽い状態を維持することで身体へかかる負担や精神的なストレスを軽減させ、更なる改善を目指します。症状が固定されてしまっているのならば、体調を整えることで、まずは少しでも耳鳴りや耳閉感や響き感が軽減する時間があるように施します。
耳鳴り・耳閉感・響き感・聴力低下(難聴)などの聞くことに関連する症状は、生活の質に大きく関わってくる大きな問題です。年齢を重ねることによってある程度の不備が出てしまうことは仕方ないにしても、その中で生活に困ることがないように、少しでも改善させるためや今の状態からの悪化を防ぐためにも、受けることのできる治療をちゃんと受けてみてはいかがでしょうか。
聞こえに関係する諸症状の治療を始めるのは、発症してから早いに越したことはありません。再発をくり返してしまっている方は次も同じように治るとは限らないので、生活習慣を改善したり再発予防の治療を受けることをおすすめします。
鍼灸治療によって改善するかもしれない耳鳴りや耳閉感や響き感をそのままにしておかず、一度ご相談ください。

④突発性難聴・メニエール病(メニエール氏病)

難聴の分類 
 難聴を分類すると、大きく「伝音性難聴」と「感音性難聴」に分類されます(下表参照)。
 伝音性難聴とは、音を拾って増幅する器官(外耳道・鼓膜・耳小骨など)に異常が発生するもので、耳垢詰まり、中耳炎、鼓膜損傷などが該当します。基本的には治療法が確立されており、聴力の回復が期待できる難聴です。

 これに対し感音性難聴は、音を信号に変換し脳に伝える神経系(内耳や大脳)に異常が発生するもので、聴力の回復は非常に困難です。突発性難聴やメニエール病、先天性難聴、老人性難聴、騒音性難聴、薬剤性難聴などが該当します。
 伝音難聴と感音難聴の両方の疾患を伴う難聴は、混合性難聴といわれます。
難聴の種類 原因 代表的疾患
伝音性難聴 外耳~中耳に異常 中耳炎、耳垢づまり、鼓膜損傷など
感音性難聴 内耳~脳までの聴覚路に異常 突発性難聴、メニエール病、老人性難聴、先天性難聴、騒音性難聴、薬剤性難聴

伝音難聴の多くは、外来処置や投薬、手術治療によって聞こえを回復させることができます。感音難聴のうちで急に悪くなったもの(急性音響性難聴、突発性難聴など)は治せるものもありますが、徐々に進行する難聴(加齢による老人性難聴など)や、先天性の感音難聴などは治すことは困難です。

感音性難聴の代表的疾患である突発性難聴メニエール病は、いまだに原因がはっきり解明されていません。
しかし、早期に適切な治療を受ければ回復する可能性もあるため、聞こえの悪さに気づいたら即刻受診が必要です。治療はまさに時間との戦いなのです。

突発性難聴の症状と原因
 ある日突然、片側の耳の聞こえが悪くなる疾患が突発性難聴です。40代~60代に多く、発症率は約3千人に1人と推定されています。
 何月何日に発症したとはっきりわかるのが特徴で、難聴が徐々に悪化したり、日によって聞こえの程度が変ったりすることはありません。また約3割にめまいが起こ りますが、1時的なもので、繰り返すこともありません。
 ストレス過労が発症の誘因になることが多いため、1日も早く入院して安静治療を行うことが望ましく、できれば1週間以内、遅くとも2週間以内の治療開始が必要です。
 適切に治療すれば、患者さんの3分の1は完治し、3分の1は難聴や耳鳴りが残るものの症状は軽くなり、あとの3分の1は残念ながら治りません。
 目安として、 (1)2週間以内に治療開始 (2)初診時の難聴が高度(90デシペル以上)ではない (3)めまいがない (4)比較的年齢が若い などの条件を満たせば完治しやすいといわれます。
 原因として内耳の循環障害やウイルス感染説が有力視されています。

メニエール病の症状と原因
 ぐるぐる回る回転性めまいと、通常は片耳の難聴耳鳴りを主症状とする疾患です。突然の激しいめまい発作が30分から6時間程度続き、その間、難聴や耳鳴り以外に吐き気や嘔吐、腹痛などの症状も伴います。発作時は立っていることができず、じっと横になっているしかありません。めまいが治まると難聴や耳鳴りも元に戻りますが、不定期にめまい発作を繰り返すたびに少しずつ難聴が悪化していくのも特徴の1つです。

 30代~40代の女性にやや多く、やせ型几帳面神経質な性格の人がなりやすいという統計もあります。発症には精神的ストレス肉体的疲労睡眠不足が引き金になるようです。初期には突発性難聴や前庭神経炎と鑑別できない場合があるため、確定診断には様々な検査を行なう必要があります。

 原因は不明ですが、患者さんの内耳では内リンパ腔が腫れる「内リンパ水腫」が起きることがわかっています。
 突発性難聴と同様、症状が固定化する前に受診して、早期に治療開始することが重症化を防ぐポイントです。

鍼灸院での治療
 鍼灸治療には、(突発性難聴やメニエール病の治療として多くの病院で処方される)薬と拮抗してしまうような副作用はないので、服薬と並行して治療を受けても何ら問題はありません。肉体的疲労を解消させて体全体および耳周囲の血流改善を目的とした治療を行うので、むしろ薬の効果は高まると考えています。
突発性難聴の症状は発症から治療開始が早いほうが、改善の確率は高くなります。しかし、たとえ鍼灸治療開始が何年か遅れたとしても、発症早期で治療を開始した時に比べて改善の確率は低くなってしまい、効果が現れるまでの期間も長くなりますが、改善の可能性はゼロではないのです。

⑤顎関節症

顎関節症とは?
 顎関節症は、顎の関節や顎を動かす咀嚼筋に異常が起こり、「あごが痛い」、「口が開きにくい」、「音がする」、あるいは「ものが噛みにくい」といった症状が現れる病気です(図1)。
疫学調査の結果から、顎に何らかの症状を持つ人は全人口の7~8割に上るとされていて、このうち、病院で治療を受けている人は7~8%です。実際には、顎関節の症状を抱えている人に男女差はないのですが、患者さんは女性が多く、男性の2~4倍で、それも若い女性と中年の女性に多いのが特徴です。病院を受診する動機は、顎関節の痛みを主訴とする人が圧倒的で、関節周辺や頬、こめかみが痛む場合もあります。女性の患者さんが多い理由として、女性は顎の筋力が弱いとか筋肉の血液循環が悪いといったことも考えられますが、女性の方が痛みを感じやすいが、痛みが強くても耐えられるために自然には回復不可能な状態になってしまい病院を受診せざるを得ない状態になってしまうのではないかということが考えられます。
前述の調査結果からも分かるように、顎関節症はかなり一般的な病気です。多少の症状は特別な治療をしなくても、やがて改善に向かい、自然に治まることも多いのですが、痛みや、口が開けづらい、物が食べにくいなどの症状によって日常生活に支障があれば、何かしら治療を受ける事をおすすめします。
顎関節症は、日常生活の中で無意識に行っている習慣が原因となっていることが多く、これを自覚してあらためることで、予防や症状の緩和も可能です。快適な生活を送るためには、成り立ちを正しく理解し、きちんと手当てをすることが大切です。

顎関節症の自己チェック
 全く自覚症状がないという人でも顎関節症が潜んでいる可能性があります。表1で思い当たる症状がないかどうか、あごの状態をチェックしてみてください。また、表2には歯ぎしりやくいしばりなど、顎関節症の発症に大きくかかわる生活習慣を挙げました。それぞれの項目は、顎関節症を起こすだけでなく、いったん起こってしまうと長引いて治りにくくする要因でもあります。自己チェックしてみましょう。

表1.顎関節症の自己チェック
▢食べ物を噛んだり、長い間しゃべったりすると、あごがだるく疲れる
▢ あごを動かすと痛みがあり、口を開閉すると、とくに痛みを感じる
▢耳の前やこめかみ、頬に痛みを感じる
▢ 大きなあくびや、りんごの丸かじりができない
▢ときどき、あごがひっかかったようになり、動かなくなることがある
▢人さし指、中指、くすり指の三本を縦にそろえて、口に入れることができない
▢ 口を開閉したとき、耳の前の辺りで音がする
▢最近、あごや頸部、頭などを打ったことがある
▢ 最近、かみ合わせが変わったと感じる
▢頭痛や肩こりがよくする
いくつか該当する人は顎関節症の可能性あり

表2. 顎関節症の発症に関わる生活習慣
▢ 「歯ぎしりをしている」といわれたことがある
▢起床時、日中、気がつくと歯をくいしばっていることがある
▢ 食事のときは、いつも左右のどちらか決まった側でかむ
▢物事に対して神経質な面がある
▢ 職場や家庭で、ストレスを感じることが多い
▢夜、寝付きが悪い、ぐっすり眠れない、途中で目が覚める
上記に該当する数が多いほどなりやすい

主な症状
 顎関節症という診断名は、ある特定の病態、原因、症状を示すものではなく、多様な症状、病態、原因からなる顎関節と咀嚼筋および頚部筋の障害をまとめた病名です。

1.痛み
 顎関節症の第一の症状は顎運動時痛です。開口、閉口運動時や咀嚼時に下顎頭が動くことによる顎関節痛と咬筋、側頭筋などの咀嚼筋が活動することにより筋痛が生じます。
(1-1 顎関節痛)
 顎関節痛が起こる主な病態は、顎関節周囲の軟組織の慢性外傷性病変です。滑膜炎、関節包あるいは円板後部結合組織における細菌感染のない炎症です。下顎頭と接するこれら組織に炎症が生ずると、神経が過敏になり、顎運動時に下顎頭の動きにより刺激されて痛みが生じます。

(1-2 咀嚼筋痛)
 筋痛は様々な病態によって生じます。最も一般的な病態は筋・筋膜疼痛で、頭頚部および口腔顔面領域の持続性疼痛の最も一般的な原因でもあります。筋・筋膜疼痛の特徴は局所的な鈍い、疼くような痛みとトリガーポイントの存在で、筋肉を機能させると痛みが増します。活動的な状態のトリガーポイントを圧迫すると、ジャンピングサインと呼ばれる逃避反応が生ずるほどの鋭い痛みを局所に生ずるとともに離れた部位に関連痛を生じます。

2.開口障害
 通常、病気がなければ自分の指、人差し指から薬指まで3本を縦にして口に入ります。その時の開口量が約40mmです。最大開口量が40mm以下の場合には顎関節、咀嚼筋に何らかの異常があると考えるべきです。開口障害の原因には1)筋性、2)関節円板性、3)関節痛性、4)癒着がありますが、突然に開かなくなったときには関節円板の転位によるものです。また、知らないうちに徐々に開かなくなっているのは筋性です。
上記の開口障害の原因を診断することは簡単ではありませんが、基本的診査として下顎頭が正常に前方に滑走するかどうかを調べ、滑走できるならば、次に最大開口時に左右いずれかの咬筋が強く緊張していないかどうかを診査します。下顎頭に滑走制限がある場合には関節円板性、癒着性が疑われ、下顎頭は滑走するが開口制限がある場合には筋性が疑われます。

3.関節雑音
 咀嚼や大開口時などにカックンとかガリガリといった関節音が生ずることがあります。最も多い関節音は関節円板性開口障害に先行する復位を伴う関節円板転位によるものです。前方に転位した関節円板が開閉口に伴って下顎頭が前後に動く際に下顎頭上に戻ったり、再度転位する時にカックンといった単発音が生じます。その他の関節雑音として下顎頭や関節窩、関節円板が変形して下顎頭と直接的、間接的にすれ合うことにより生ずるシャリシャリ、グニュといった軋轢(あつれき)音があります。関節雑音は痛みを伴う時以外は治療の必要はありません。

顎関節の構造と顎関節症の障害
 顎関節というのは、両耳の前に指を当てて口を開け閉めしたとき、盛んに動く部分です。顎関節は、頭の骨(側頭骨)のくぼみ(下顎窩)に、下顎骨の丸く突きでている下顎頭が入り込む構造をしています。下顎窩と下顎頭の間には関節円板というクッションの役目をはたす組織があり、下顎窩と下顎頭が直接こすりあわないようになっています。関節円板は骨ではなく、コラーゲンという膠原線維がぎっしりつまっています。この関節円板と下顎頭が正常に移動することによって、口を大きく開けたり、閉じたりすることができるのです。 図2を見ると分かるように、正常では関節円板が下顎頭と一緒に移動しています。しかし、障害がある場合、関節円板がずれてひっかかり、はずれるときに音がしたり、ひっかかりが強くなって下顎頭の動きが妨げられ口が開かなくなることもあります。

原因
 従来は顎関節症の原因は噛み合わせの異常と考えられていましたが、顎関節症の原因は多因子で嚙み合わせの異常もその一つと考えられています。最も一般的な原因はパラファンクションで、特に日中、睡眠中のくいしばりが筋痛に大きく影響しています。次に多い原因は睡眠中の歯ぎしりでこれは関節痛に影響します。

病院へ行くのなら
 顎関節症や歯ぎしりの治療で病院へ行くのなら、歯科医院もしくは病院の口腔外科が専門になります。
顎を動かす動作の検査や、顎関節部のレントゲン・CT・MRIなどの画像診断で診断名が付けられます。

自分でできるケア

 患者さまの多くは、日中に気がつくと歯をくいしばっているようです。また、食事のときに、左右どちらか決まったほうだけで噛んでいる「偏咀嚼」をしていることもみられます。歯ぎしり、くいしばりなどは、あごに過剰な力をかけてしまいます。精神的なストレスは、日中の無意識のくいしばりや肩、首、顔の筋肉の過度の緊張、さらに睡眠障害を招き、睡眠中のくいしばり、歯ぎしりの原因になります。偏咀嚼のくせは、片側だけの筋肉や関節に負担を増します。これらの原因は、いずれも生活習慣にひそむ動作や癖です。こうしたあごに負担をかける生活習慣、しかも気づかずに行ってしまっている癖を洗いだし、改善していくことが、顎関節症のセルフケアであり、治療において重要なだけでなく、発症を防ぐことにもなります。

セルフケアは、原因排除のための方法と、関節障害改善のための安静、負荷の軽減、筋障害改善のための負荷の軽減、筋ストレッチなどがあります。

セルフケアの基本は、あごを安静にすることと負荷をかけないことです。何もしていないときに上の歯と下の歯が接しているだけでも筋肉に負荷がかかっているのです。日中にくいしばっていることが多い人は、上下の歯の間は離しておくために、ときどき歯の裏側や口蓋部を舌でなめるようにするとか、チューインガムを前歯でクチュクチュ咬んだり、舌で転がすようにするのが効果的です。また、各個人の平均最大開口量である人差し指から薬指まで3本を縦にして口に入れて、筋肉のつっぱり感を感じながら5秒間そのままの状態にしてストレッチするのが大変効果的です。なるべく1時間に1回は行うように務めましょう。温めたタオルで緊張の強い部分を温めた後の筋ストレッチはさらに効果的です。

顎関節症は1~2週間で治すことはむずかしいですが、指示に従ってセルフケアを継続すれば、長くても数か月から半年で9割の人が治ります。ぜひセルフケアを怠らず、続けていただきたいと思います。

鍼灸院での治療

 顎関節症・歯ぎしりの治療には、鍼灸治療が有効です。それは、鍼灸治療が筋肉の緊張を緩和させることを得意としているからです。鍼を刺すことで、皮膚の奥の硬くなった筋肉に対して直接刺激を加えることができるからです。顎関節周囲や側頭部の筋肉を緩ませることで、噛んだ時に顎関節が受ける負担を減らすことができます。負担を減らすことで、痛みを減らし、症状の悪化を防ぎ、回復を促します。顎関節に負担のかかる習慣(噛みしめ・はぎしり・大口を開けるなど)を減らすことも大切です。首や肩の筋肉の緊張を和らげることで、精神的にもリラックスさせることができ、歯ぎしりを減らすことができます。
普段何も思うことのない「噛む」という行為もそれが困難になると、健康の大切さに気付かされます。セルフケアでの回復が一番望ましいのですが、なかなか症状が改善されない時には、自然治癒力を高め、回復を促進させる鍼灸治療を受けてみてはいかがでしょうか?
顎が痛い・歯ぎしりをしていて病院や歯医者で「特に問題なし」「そのままにして様子を見てください」と言われたけれど辛い症状がある時などでも諦めてはいけません。辛い症状を少しでも楽にするために、困った時にはお気軽にご相談ください。
図1
図2

⑥眼精疲労

眼精疲労とは?
「目が疲れる」「目が痛い」といったことは、誰でも日常よく経験します。でも、たいていはしばらくたつと忘れてしまいます。しかし、ときには症状が頑固に続いたり、からだに悪影響が及ぶこともあります。医学的にはこのような状態を「眼精疲労」と呼んで、単なる目の疲れである「眼疲労」と区別しています。
眼疲労 一時的な目の疲れのことを言い、睡眠をとるなどの休息によって自然と解消される。
眼精疲労 眼痛・視力低下・肩こり・頭痛のような全身症状が出て、継続的に繰り返される。
目や全身の症状は休息や睡眠をとっても十分に回復しえない状態になっている。
 眼精疲労は、屈折異常(近視、遠視など)ドライアイなど目の病気や、目とは関係のない全身の病気の一症状として発症することもあります。近年では、パソコンやスマートフォンなどを用いて長時間コンピューター業務を行う機会も多く、VDT症候群(Visual Display Terminals症候群)の一環として眼精疲労を発症する方も増えてきています。

原因
 眼精疲労の原因は一つではなく、目や全身の病気に関連した病気もあれば、心理的環境的な要因によるものもあります。

目に関連した眼精疲労としては、遠視や近視、乱視といった屈折異常に伴うものがあります。こうした屈折異常が存在すると、ものを見るという日常的な動作に関連して常時目に負担をかけることになります。眼鏡やコンタクトレンズによる矯正が適切でない場合もあります。その他、老眼やドライアイ、白内障、緑内障なども眼精疲労の原因となります。

近年では、パソコンやスマートフォンの登場に関連して、長時間パソコン業務に従事する方も増えてきました。デジタルデバイスの画面に長時間焦点を合わせて作業を続けることから、VDT症候群と呼ばれるものを発症する方が増えてきました。VDT症候群が原因となり、眼精疲労を発症する方も増えてきています。

その他、高血圧や虫歯、貧血、自律神経失調症などが原因となって眼精疲労が引き起こされることもあります。

病院に行くのなら
 眼精疲労の症状があり、病院へ行くのならば眼科が専門になります。眼精疲労の原因となるドライアイについて、シェーグレン症候群など他の疾患が原因でないかを検査することになるでしょう。

自分でできる解消法
1.まばたきを意識し、休憩をとる
 眼を休めることが一番です。
まばたきをすると眼のまわりの筋肉がストレッチされるので、ドライアイ予防にもなるので意識的にまばたきをしましょう。
仕事で長時間のパソコン作業など、集中して文字や画像を追う作業が続く場合、1時間に10分程度の休憩をとって眼を休めるとよいでしょう。難しい場合、コピーとを取りに行ったり、シュレッダーに掛けるなどの眼に負担を掛けない作業をすることがおすすめです。
眼を休めることが一番です 。

2.「遠く」を見てみましょう
 眼のまわりの筋肉をほぐす動きやストレッチをすることで、疲れ眼の改善やリフレッシュにつながります。
遠くをぼんやり眺めることは眼の緊張を和らげます。 近くを見ると緊張する毛様体筋は、近くを見続けると緊張して凝り固まってしまい疲れ眼の原因に。遠くを見ることは毛様体筋がゆるむことになるので、眼の筋肉のリラックスになるのです。

3.蒸しタオルやホットアイマスクで眼をリフレッシュ
 逆に眠る前など休める時間には水に濡らしたタオルをしっかり絞って、電子レンジで約40秒(600w眼安)加熱した蒸しタオルで眼を温める方がおすすめです。 温めることで血行が良くなり、筋肉の緊張がほぐれ、リラックスできます。市販のホットアイマスクなら携帯にも便利!また、眼の周りには交感神経から副交感神経に切り替わるスイッチがあるので、温めることでリラックスした状態にもなります。
症状に合わせて眼を冷やしたり温めたりしましょう .

4.疲れ眼をほぐす眼の体操
 眼の体操は、眼の筋肉を刺激して疲れをほぐします。但し、やりすぎは禁物。心地よいと感じる程度にしておきましょう。
眼球を上下左右に動かしたり、眼をぐるぐる回してたりと簡単な動きでも効果があります。
ほかにも、眼をぎゅっと強く閉じたり、パチパチまばたきをしたり、眼の上に軽く手を覆ったりという動きも、眼の疲れにおすすめです。

5.眼に良い食事を心がける
 眼に良いとされる食品(栄養素)は沢山ありますが、それだけを摂れば良いというわけではありません。主食、副菜、主菜、乳製品、果物の5つのジャンルをバランスよく摂ることを基本とし、その上で眼に良いとされる食品を参考にして摂っていくというのが良いでしょう(表1参照)。

 眼精疲労は、何らかの手を打たなければ、仕事や環境が変わるといった生活の変化がない限り、自然には治りません。不快な症状がいつまでも続き、その症状がさらに状態を悪化させることもあります。さらに、背後に目やからだの病気が隠れている可能性も考えられます。ですから「ただの目の疲れ」などと軽く考えず、なるべく早く診察を受け、ご自分に合った治療と対策を立てましょう。

鍼灸院での治療
 鍼灸治療では「目を使うことで疲労して硬くなってしまった筋肉を柔らかくする」ことで眼精疲労を改善します。筋肉を柔らかくして疲れを解消するには血流を良くすることが効果的なので、目の周り(眼球周囲及び眼窩内)の血の流れを良くすることが、治療の大きな目的の1つになります。
また、目の疲れは精神的なストレスにもなり、メンタル面への影響もあるので、うつ症状への治療の際にも眼精疲労の治療を加えることが多くあります。
表1

⑦脱毛症

脱毛症とは?
 脱毛症とは、本人が生えることを期待していた毛髪(主に過去に生えていた箇所の毛)が生えなくなった状態、毛髪が抜けてしまう状態、あるいは毛髪が短くかつ細くなった状態です。
 ヒトの毛髪は、正常な状態でも「毛周期」と呼ばれる一定のサイクルで『抜けては生える』を繰り返しています。正常な人でも、毎日50~100本程度の毛髪が、頭皮から抜け落ちていきます。
 生理学的には、人の頭髪の形状は年齢や個々人の個性により多様であり、こうあらねばならないという正解があるわけではありません。
 
 脱毛症は、美容上の理由でお悩みになる方が多いのですが、全身の病気(全身性疾患)の徴候である可能性もあります。

【脱毛の主な原因と特徴】
原因 一般(典型)的な特徴
男性型脱毛症
(アンドロゲン性脱毛症)
・どの年代でも発症する
・前頭部からM字型にあるいは頭頂部から円形に脱毛が進行する(図1)
・家族歴
・タンパク同化ステロイドの使用歴がある方
女性型脱毛症
(アンドロゲン性脱毛症)
・家族歴
・閉経時
・前頭部の毛髪は比較的維持されるが、前頭部から頭頂部の間が薄くなりやすい(図2)
・男性的な特徴(男性化)がみられる女性
・タンパク同化ステロイド(ジヒドロテストステロンなど)の使用歴がある方
・男性ホルモンを分泌する腫瘍がある女性
薬剤と有害物質 特定の化学療法薬、抗凝固薬、レチノイド、経口避妊薬、ベータ遮断薬、リチウム、抗甲状腺薬、抗てんかん薬、高用量のビタミンAなどの薬剤、あるいはタリウムやヒ素などの金属に対する曝露
脱毛の原因になるストレス  (精神的または身体的) ・最近の体重減少、手術、発熱を伴う重度の病気、出産などのストレスで起こる脱毛
・一般的にはストレスが生じてから数ヶ月後に毛髪が抜ける
甲状腺の病気 甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症
栄養不良 ビタミンA過剰症、鉄欠乏症、亜鉛欠乏症
円形脱毛症 ・どの年代にも起こり得る
・毛髪を作るおおもとになる毛包のうち「毛根」と呼ばれる部分が炎症により破壊される事により生じる
・原因は自己免疫反応、つまり免疫(リンパ球)による防御機構が誤って攻撃するため
《症状》
・斑状の脱毛(脱毛斑の縁周囲に短く折れた毛を伴う)
・頭皮中央部の脱毛(頭皮の周辺部の毛髪は残る)
・蛇行性脱毛症(頭皮の横側と後ろ側の生え際から脱毛する場合)
・全頭脱毛症(頭全体の脱毛)
・汎発性脱毛症(全身と頭皮全体の脱毛)
全身性エリテマトーデス 頭皮に発疹が生じ、赤くなって盛り上がり、鱗屑(うろこ状のくず)を伴う、部分的な皮膚の瘢痕化、かゆみ
頭部白癬(しらくも) 脱毛部位に小さな黒い点(頭皮表面で折れた毛による)や頭皮表面のすぐ上で折れた毛が見られる、皮膚に円形の鱗屑(うろこ状のくず)を伴う部位が生じ、赤くなったり炎症を起こしたりする場合がある
熱傷、外傷、放射線 熱傷、放射線療法、外傷の既往
牽引性脱毛症 三つ編み、ヘアカーラー、ポニーテール状態をあまりに長時間続けているか、強く引っ張り続けている
抜毛症 強迫的な抜毛、非対称に生じる不規則な脱毛パターン、女性が男性より4倍多い

このように、脱毛は多くの疾患にみられますが、上記のうち脱毛を主症状とし、且つ鍼灸の適用となる「男性型脱毛症と女性型脱毛症(アンドロゲン性脱毛症)」についてお伝えします。

東洋医学的な考え方
 現存する中国最古の医学書と呼ばれています『黄帝内経』では、脱毛のことを「髪堕(はつだ)」として述べています。髪は腎と密接な関係にあり、また「血の余」ともいわれており、血との関係も密接です。
 【分類】
病症 病態・症状
血熱による脱毛 ・『精神的刺激により心火が盛んになり、血熱により内風が生じると脱毛が起こる』
・部分的に脱毛することが多い
・口が乾く、便秘、尿が黄色い、舌は紅く、舌苔は黄色い
瘀血による脱毛 ・『精神的刺激により気滞血瘀が生じたり、または他の原因により血が停滞して血行が悪くなり、毛髪がうまく栄養されなくなると脱毛が起こる』
・部分的または全体に脱毛し、持続的に経過する場合が多い
・口は渇くが飲みたくない、顔色がどす黒い、頭痛を伴うこともある、舌は赤黒いまたは瘀斑(黒いしみ)がある
気血両虚による脱毛 ・『慢性疾患や産後などにより気血が虚し、毛髪がうまく栄養されなくなると脱毛が起こる』
・年齢に関係なく慢性病や産後に発病し、一般的には掻痒感はない
・息切れ、心悸、顔につやがない、舌は血色がなく(淡)、脈が細く弱い
肝腎陰虚による脱毛 ・『肝腎陰虚で陰血が不足し、毛髪がうまく栄養されなくなると脱毛が起こる.また陰血が不足していると燥が生じやすく、これが血燥となることにより脱毛が起こることもある』
・成人に多く、毛髪は細く柔らかくて油状の光沢があり、頭頂部や前額角に起こりやすく、頭皮の油脂が多い、持続的に脱毛している
・耳鳴り、めまい、腰や下肢の重だるさ、不眠、無力感、頭の痒みなどを伴いやすい、舌が紅い、舌苔は少ない、脈は細くて速い

当院での治療
 病症により施術内容は異なりますが、どの病症においても、患者様の身体の好不調を伺い、全身の状態を整えつつ頭皮に鍼や温熱療法を用いて施術を行ないます。
 また、毎日行なっていただく簡単なセルフケアにより、効果に差が出てきます。そのヘルスケアも併用して行なっていただければ、2週間に1回もしくは1ヶ月に1回の施術で(個人差はございますが)半年後には変化が出てきます。
 
自分でできるケア
①梅花鍼
初回ご来院時にお渡しします『梅花鍼』(図3・図4)を用いて、毎日1回5分~10分程度頭皮を刺激していただきます。
~梅花鍼とは~
 昔から脱毛症に用いられている伝統的な治療法です。
ハンマーの形をしています。ハンマーの尖端には小さな鍼がたくさんついている面と、大きめの鍼が1本ついている面があります。発毛を促すには、鍼がたくさんついている方を頭に打ちつけます。
 叩くことにより、局所の皮膚やリンパを刺激して、皮膚や筋肉の緊張を緩めることで頭皮の血行を促進し、髪の毛の栄養状態を改善します。血流の改善や新陳代謝を促進させる事により、ご自身が持っている自然治癒力を高める効果があります。

【注意事項】
・皮膚にかさぶた、かゆみがあるようでしたら1日休んでください。
感染予防のために、梅花鍼は頭が清潔なときに使いましょう。叩いたあとは、市販の消毒液等で患部と梅花鍼を消毒しておきましょう(2回目以降ご来院時にご持参いただきますと、当院で滅菌処理いたします)。
・叩いた後1~2時間はシャンプーを控えましょう。

②洗髪(シャンプー)について
 脱毛症になると、どうしても毛髪を失うことに対する心配から洗髪がおろそかになりがちです。よい頭皮の状態を保つことは脱毛症の治療において大変重要です。
 
 毎日か1日おきくらいには、頭皮も含めてよくシャンプーして良好な頭皮を保つように心がけてください。

③規則正しい生活を
 俗に『強い精神的なストレスなどが加わるとリンパ球などの免疫反応が変調し、毛包に炎症が起こって毛が抜けるのではないか』と言われていますが、実ははっきりとした原因はわかっていません。
 
しかし、脱毛は全身の状態と関連を持ちますので、疲れをためないよう、できるだけ規則正しい生活を心がけると良いでしょう。

また、血行不良の原因となる睡眠不足、喫煙、アルコール過剰摂取、糖質過多にも注意しましょう。 

④髪や肌に良い食事を心がける
 髪や肌にいい食べ物には、大きく分けると次の7種類があります。

1,タンパク質
 髪の基本成分であるケラチンのもとになる、上質のアミノ酸を含むタンパク質  が多い食品(肉、魚、卵、大豆製品、牛乳、乳製品、カキなど)

2,ヨード
 甲状腺の働きを助け、髪の発育を促進するヨードを多く含む食品(わかめ、昆布、ひじきなどの海藻類

3,ビタミンE、A

 血行をよくして抜け毛を防ぐビタミンE、Aを多く含む食品(にんじん、かぼちゃ、小松菜、ほうれん草などの緑黄色野菜、玄米、胚芽米、小麦胚芽油、ごま、ナッツ類、紅花油など)

4,ビタミンA、C、E、Fなど

 ③と同じ役目を果たす、ビタミン、特にA、C、E、Fなどを多く含む食品(レモン、オレンジ、キンカン、さくらんぼ、いちごなどの柑橘類

5,エイコサペンタエン酸

 血液の凝固力を下げてコレステロールがたまるのを防ぐエイコサペンタエン酸を多く含む食品(いわし、ぶり、さばなどの背の青い魚

6,ビタミンB

 頭皮の新陳代謝を促進するビタミンBを多く含む食品(玄米、小麦胚芽油、豚肉の赤身、レバー、マグロなど)

7,
コラーゲン

 髪のツヤや張りをよくするコラーゲンを多く含む食品(長いも、れんこん、納豆など)
 
 ただ、いくら髪に良い食べ物だからと言って、1つのものばかり食べるのは栄養が偏るので良くありません。髪に良い食べ物をバランスよく体に摂り入れることで薄毛を予防し、健康な髪も守ることができます。

    図1
    図2
    図3
    図4

    CONTACT

    NAO鍼灸院
    〒861-5287
    熊本市西区小島8-9-15
     ウエストヴィレッジⅠ 101
    TEL/FAX:096-201-2958(受付 7:00~19:00)
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